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こんにちは、Ichi先輩(@Abstract1Life)です。
今日は、みなさんが取っ付きにくい「論文」について、簡単に読める方法というか、論文ってどんなものなのかってことを解説を交えてお話しようと思います。
論文って読みにくくて、お堅い感じの代物だと思いがちですが、全部読まなくても特定の箇所だけ注目すれば、信頼できる良い情報源になります。
この記事を読んで、少しでも「論文」ってものを身近に感じてもらえると嬉しいです。
論文って何?
論文と言うのは、学術雑誌の規定にそって投稿された文章で、主に研究の結果について筋道を立てて書かれているものです。
お堅い読み物だと思われがちですが、自分の研究についての物語を語っている、ある意味小説みたいな感じです。
でも物語は物語なんですが、規定通りに書かないといけないし、全部客観的に書かないといけないので、どうしても堅いように見えちゃうんですよね。でも、書いてあるのは全部ストーリーのあるお話ですよ。そう思うと取っ付きにくさが少し減りませんかね?
論文の8本の柱
論文は「規定」という名の8本の柱があって組み立てられています。
いわゆる大きな章立てで「起承転結」みたいなものだと思ってもらえばいいです。
みんなが自由気ままに書いてしまうと、読む人が、どこに何が書いてあるか分かりにくいので、ある意味、気を使ってこのような規定を作っています。
1. タイトル(Title)
まず、タイトルです。何が何でもタイトル。
ブログを書いている人なら、タイトルの重要性っていうのは痛いほど感じていると思いますが、論文でもかなり大切です。
ですが、ブログと違うのは集客を狙うようなやや煽り気味なタイトルのつけ方ではなく、しっかりと論文内容を端的に表すタイトルにしなければいけない点です。
ま、本来ブログもそうでなきゃいけないと思うんですけど、人を集めなきゃ読まれない分ある程度仕方ないのかなとも思います。論文の場合はひとまず、雑誌に載せることが目的になっている感があって、必要な人が必ず検索するので、そこまで集客は意識していません。
本当は集客も意識すべきなんですけど、そこは学術分野の今後の課題ですね。
2. 要旨(Abstract)
私のブログタイトルにもなっている「要旨」ですが、ここも論文にとって非常に重要な役割を成しています。論文誌にもよりますが、300ワード位で論文の内容をまとめているのが、この「要旨」の項目です。
限られた文字数で論文の内容を分かるように伝えないといけないので、書く人もここにはかなり気を使います。なので、ここが上手く書けていない論文は大体ダメです。
3. 背景(Introduction)
背景には、この論文を書くにあたっての状況の説明を書きます。物語で言うところのプロローグみたいなものです。「時は世紀末」みたいな現在の状況を説明してやらないと、後々いきなりケンシロウが暴れまわっても訳分かんないですから。
ただ、しっかりとぞれぞれの状況を文献を添えて説明する必要があります。
文献というのは、簡単に言えば参考資料です。この過去の論文ではこう言ってますとか、この本ではこう言ってますとか、そういう他の人の意見でこの説明をしなきゃいけません。
自分の意見だけで背景を書くと「モテまくって辛いわぁ。寝る時間ねえわぁ。」みたいな妄想だらけの背景になる可能性があるんで、ちゃんと客観的な情報で作っています。
過去に生み出された知識を集めて、その上に今回の論文をポンっとのっけるイメージです。ニュートンが言った「巨人の肩の上に立つ」という言葉はまさにこのことを指していて、背景の部分はこの巨人を作り出す作業なんです。
なので、読むときには、この背景の部分を読めば今の状況が分かりやすいと思います。結構お得な情報がいっぱい載っているので、要チェックです。
4. 目的(Object)
目的も論文の中で大切なポイントです。この論文の中でのゴールがコレなわけです。
ビシッと目的はこれだ!って書いてくれているはずなので「ふむふむ、君に出来るのかね?」とちょっと上から目線で眺めてやりましょう。
基本的に論文って批判的に読みます。要はツッコミを入れながら読むわけです。しっかり自分でこの情報が正しいのか考えながら読んだらいいんですね。
批判についてよく勘違いしている人がいますが、批判は否定ではありません。批判はあくまでそのことを評価するために、良いところ、悪いところを判断するってことです。
ブログでたまに批判的なコメントとか言及を見てすぐに否定だと受け取る人がいますが、それは良くないと個人的には思いますね。
5. 方法(Method)
方法では、どんな風にこの研究をやったのかということが詳しく書いてあります。ただ、大体の場合にはその分野の素人が見ても分からないので、見なくていいです。
適当に図とかがあったら見るとなんとなく分かるかもしれません。
6. 結果(Result)
結果の部分には、この研究で得られたデータが書かれます。ここには、他の人の参考文献とか自分の意見とか、一切記載されません。ただ、黙々と得られた結果だけが並べられます。
なので、基本的に見ててもつまんないです。だから見るのはやめましょう。
7. 考察(Discussion)
ここは、さっきの結果を踏まえて、筆者が色々と考えたことを発表してくれるところです。何でこんな結果が得られたのか、その結果に関係するような参考文献を持ち出して語ってくれます。
時には自信を持って語りますし、時には言い訳じみたことを語ります。
結構面白いですし、背景と同じくらい情報を色々教えてくれるので、お得な部分だと思います。美味しい部位です。
8. 参考文献(Reference)
論文の最後には、論文の中で使った参考文献が一覧になって書いてあります。大体次に読もうと思う論文とかはこのリストの中から見つけたりすることが多いです。
あと、結構この参考文献のリストで、この筆者がどの位知識を持って論文を書いたかってのがわかってしまうので、論文の良し悪しを判断したい場合にはここを読むと良いです。
参考文献の書き方は方式によって違うのですが、APAという方式だと以下の通りです。
著者名(出版年). 論文名. 雑誌名. 巻数, 号数, ○○ページ-○○ページ.
こういう感じの並びの文献がズラーッと並んでいて、良し悪しの判断のポイントは「量」「質」「年」です。
「量」については、とりあえず、2、3件しか参考文献載ってなかったら、ほとんどが筆者の妄想で書かれていると思って良いでしょう。独りよがりな意見なので、大して価値がない論文です。
書かれている内容はもしかしたら良いことなのかもしれませんが、それを保証してくれるものがないので、論文としては価値がありません。ブログとかはまた別ですけどね。
「質」については、判断が難しいですが、良く分からない普通っぽい雑誌とか、紀要とかが参考文献に挙げられているものは結構怪しいですね。
紀要っていうのは、大学や研究所などが発行している雑誌で、きちんとした査読(チェック)がないものが多いので、質が低いものが紛れ込んでいることが多いです。
「年」については、基本的に古いものばかり書いてあるものは良くありません。もちろん古くても良い論文だったり、核になる論文はあるので、一概に悪いとは言えません。
ただ、新しい論文も読んでいないと、既に議論されたことを繰り返しているような場合があって時間の無駄です。
良い論文の見分け方
論文は良い情報源になるって話しましたけど、論文なら何でもいいというわけではありません。
論文は投稿してから、その分野に詳しい研究者の査読という審査を経て、それを通過できたものが掲載されます。この査読が行われていない雑誌もありますし、形だけあるような雑誌もあります。
なので、論文と名の付くものであれば何でも信頼してよいかと言われればそうでもないです。ネットに転がっている怪しげな情報よりは信頼できると思いますが、完全に間違いない!とは言い切れません。
本当は1つ1つ読んでみないとその論文が良い論文なのか、悪い論文なのか判断は難しいのですが、ある程度パッと見で判断する方法があります。
それが、Inpact Factor(IF)と呼ばれる指標です。このIFは、各学術雑誌につけられる点数で、その雑誌の論文が「どれだけ引用されたか」という指標です。つまり、どれだけその雑誌が影響力があるのかということを簡易に判断することが出来ます。
ただ、あくまで雑誌の評価であって、個々の論文のクオリティーを保証するものではないので、その雑誌に載っているものが全て良い論文だと言い切ることはできませんが、良い論文が載っている確率が高いのは間違いありません。
なので、IFが高い雑誌を選んで読むというのは作戦としてはアリだと思います。ただし、当たり前ですがほとんどのIFが高い雑誌は英語なので、最初は日本語の雑誌を手にとって、論文というものに慣れてみるのも良いと思います。
論文の読み方のコツ
ここでは、論文の読み方についてコツをお伝えしていきます。色々と論文の構造をご紹介してきましたけれど、全部読む必要は全くありません。
基本的にざっと読むべきなのは、「タイトル」「要旨」「参考文献」の3つです。
なぜこの3つなのかというと、大体この3つで論文の良し悪しが判断出来て、内容も分かるからです。
基本的にタイトルと要旨では、この論文が何を言いたいのか分かります。
分からなかったらその時点で悪い論文なので、読む必要はありません。
そして参考文献を見れば、その人がどの位の量の知識、どの位の質の知識、
どの位新しい知識、を持ってこの文章を書いているのか分かります。
この3つをとりあえず読んでみて、興味が湧いたり、良い論文っぽいなと思ったら他の内容の部分(背景と考察を中心に)を読めば大丈夫です。
きっと最初から訳の分からない悪い論文に出合ってしまうと、論文が嫌いになったりしてしまうと思うので、そこの選別が大事かなと個人的には思っています。
論文誌の種類
論文ですが、載っている雑誌にも様々なスタイルがあります。大きく分けると、学会誌、商業誌の2つに分けられます。
学会誌
学会誌はその名の通り、運営の母体が何らかの「学会」で、そこが発行している雑誌です。
学会というのは、同じような系統の研究をしている人たちが、集まっている団体で、「最近こんなすごいこと発見したぜ」とか「この間すごいとか言ってたけど、アレ全然ダメじゃん」とかそういう話をするための会です。
学会に入会すると、出来る主な2つのこととして、学術集会での発表と学会誌の入手があります。
学術集会というのは大体年に1回行われる、研究成果の発表の場で、一定の場所ではなく日本各地で行われます。大会長になっている先生のいる大学のある場所でやることが多いですね。
「色々研究の話をしたいんだけど、みんなバラバラの場所にいるから、日にち決めて集まろうぜ!」って感じの集会です。
そこで発表できるっていうのが1つ目の出来ることです。ちなみにこの学術集会自体も参加費がかかるので、要注意です。学術集会自体への参加は学会員でなくても出来るんですが、学会員よりは割高になります。
2つ目の出来ることが、学会誌の入手です。年に何回かその学会が発行している学会誌が送られてきます。その分野に関係がある、ちょっと難しい小説が何個も載っているんですが、自分も応募することができます。
商業誌
商業誌は学会誌とは別に、出版関係の企業が発行している雑誌です。裏に学会はついていません。普通の雑誌に比べたら結構割高なイメージがありますね。
オープンアクセス
学会誌にしても、商業誌にしても、手に入れることができますが、図書館に行けば閲覧することが出来る場合が多いので、自分で買う必要はあまりないと思います。
あと、最近はネット上で誰でも見ることが可能な「Open Access」の論文誌も増えてきているので、簡単に論文に触れることが出来ます。
先日紹介したコクランライブラリーは、一部のみOpen Acsessになっていて、タイトル、要約を閲覧できるので、十分に情報を得られるものになっています。
まとめ
論文の概要、読む論文のえらび方、読み方のコツをお伝えしましたが「一回読んでみようかなー」という気分になってもらえたでしょうか?
最初はとりあえず何でもいいので、目にしてみて、案外普通の文章だなってその壁を取り払ってほしいなと思っています。
ネット上で何か知りたいことがあったら、普通に「Google」で検索するのもいいですが、「Google Scholar」で検索すると学術的な情報が得られるのでオススメです。幾つか論文も出てくると思うので、見てみてはいかがですか。